研究概要 |
光エレクトロニクスデバイスの主材料であるIII-V族化合物半導体をベースとした半導体磁気光学結晶を開発し、その光物性・磁気光学物性を制御することによって、未来の光情報通信システムに役立つ新機能デバイスを試作する。対象とする物質系は、(1)GaAs等の半導体中にMnAs等の強磁性金属ナノクラスターが埋め込まれたグラニュラー材料、(2)GaMnAsやInGaMnAs等の磁性混晶半導体とそのヘテロ構造、(3)強磁性金属(MnAs)/III-V半導体から成るヘテロ構造、でいずれも本研究者が研究開発中の新物質である。これらの物質系を用いて、従来の半導体では実現不可能であった、ファラデー効果やカー効果など光の非相反性がもたらす巨大な磁気光学効果をもつ「半導体をベースとした磁気光学結晶」を実現し、エピタキシャル成長とバンドエンジニアリング、光波エンジニアリングの手法を駆使することによってその物性機能を設計・制御することを目的とした。 本年度は、GaAs : MnAsナノクラスター構造の形成とその物性の最適化、特に閃亜鉛鉱型MhAsナノクラスターの形成とともに、III-V族磁性半導体とヘテロ構造、半導体磁気光学結晶の物性制御の研究を行い、以下の成果を得た。 ・GaAs中にMnAsナノクラスターを埋め込んだGaAs : MnAsナノクラスター材料をさまざまな条件で形成し閃亜鉛鉱型MnAsナノクラスターを形成する条件を見出した。閃亜鉛鉱型GaAs : MnAsナノクラスター構造では光損失が低減できることを示した。 ・ドーピングによりp型伝導性を持たせると大きな異常ホール効果を示すことがわかった。 ・光照射により磁気光学効果(カー楕円率,MCD)および異常ホール効果が大きく変化することを見出した。光照射の効果はブロッキング温度以下で顕著に現れることを示した。 ・Mn-δ-doped GaAs/Be-doped AlGaAsから成るp型選択ドープヘテロ構造を形成し、200Kを越える強磁性転移温度(最高で250K)を得た。
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