研究概要 |
本年度は,テラヘルツ(THz)波イメージングに必要なTHz波光源の高出力化と和周波発生(SFG)によるTHz波検出に関する基礎研究を行った。 (1)THz波光源の高出力化 巨大非線形光学効果を有する有機DAST結晶と半導体レーザー励起光パラメトリック発振器(OPO)とを組み合わせた差周波発生(DFG)によるコヒーレントTHz波発生において,結晶厚0.2〜0.4mmの比較的薄い良質のDAST結晶と,新たに開発した2ケのKTP結晶を角度チューニングする2波長OPOを用いることにより,2〜20THz(波長150μm〜15μm)の超広帯域周波数可変THz波発生を確認した。DAST結晶の高品質化により光ダメージを低減した結果,4.3THzにおいてピークパワー110mW,11.6THzにおいて400mWと従来の10倍以上の高出力化を実現した。これらのTHz波信号は,室温動作の小型焦電素子(DTGS)により検出可能であり,現在有機機能物質および生体物質等のTHz波分光およびイメージングシステム実現の見通しを得ることができた。特に本方式は,コリニア位相整合によるDFGであるために,THz波は入射光波と同一方向に出射し周波数による出射角度変化はなく,またDAST結晶は固定でOPO共振器内のKTP結晶の角度を5°程度回転させるだけで2〜20THzまで周波数制御が可能である点が大きなメリットである。 (2)SFGによるTHz波検出 THz波と光波のSFGにより光学的にTHz波検出が可能である。本研究では,SFG材料として,DAST, GaP, GaAsおよびZnTe結晶等の非線形光学結晶のSFG位相整合特性を理論的に解明し,THz波リアルタイムイメージングの方式およびデバイスの基本設計を行った。
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