研究概要 |
(1)シリコンの結晶異方性エッチングの研究 (a)シリコン(100)面をKOH水溶液でエッチングするさいに,円形の浅い巨大なエッチピットが生じることが知られている.この発生原因を追及した.シリコン(100)でエッチングレートが極小値をとること,また,その近傍ではエッチング速度が等方的に増加することから,結晶表面の欠陥を核とするピットがエッチングの進行とともに拡大するというモデルを立てた.ナノインデンテーション法を使って,シリコン(100)表面に微小な接触力を加えたのちエッチングしたところ,閾値以上の荷重において,高い再現性で円形ピットの発生を観察した.この結果,上記モデルを実証するとともに,工業的な生産プロセスにおけるエッチピット発生抑制の指針を得た. (b)KOH水溶液でシリコン(110)および(100)をエッチングするさいに,エッチング液に含まれるppbレベルの金属不純物が,エッチング速度ならびにエッチング表面粗さに影響することを見出した.水素よりもわずかに還元電位の高い銅では100ppbの濃度以上で表面粗さの著しい増大が観察され,一方,水素よりわずかに還元電位の低い鉛では,100-500ppbの濃度範囲でエッチング速度が極小値を示した.水素と金属イオンとの還元作用の競合による金属の析出,これによるシリコン表面のマスク効果がその原因と考えられる. (c)エッチング液に加えるわずかな非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン・ノニル・フェニル・エーテル)の効果を研究した.この界面活性剤は,エッチング溶液に対して0.1wt%以上の添加で安定的に効果があり,結晶方位に関して選択的にエッチング速度を低下させると同時に,エッチング面の表面モフォロジに大きく影響する.界面活性剤の分子量を変化させ,その効果を調べたところ,低分子量においてエッチング表面の平滑化効果があることが判った. (2)水晶の結晶異方性エッチング特性評価の検討 水晶単結晶インゴットから球形試験片を製作し,エッチング前後の表面形状変化からエッチング速度の異方性を全方位に渉って測定するとともに,特にエッチング速度の小さいm面を含む領域については,別途,平面試験片を作成して精密にエッチング速度を測定した.これにより,水晶に関して,全方位にわたる詳細なエッチング速度データが得られた.このデータは,水晶デバイスの3次元エッチング形状をシミュレーションで解析するさいの重要な手がかりとなる.
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