2工程オットーサイクルのシリコンマイクロレシプロエンジンの加工・組み立て方法を検討した。SOI(Silicon On Insulator)基板とモノリシックSi基板の深堀ドライエッチング加工により、シリンダケースとピストン-バネ構造を製作した。加工したシリンダケースとピストン-バネ構造の厚さは100μmであり、燃焼ガスのシーリングに要求される構造側面の垂直度89度を満足した。ピストン-バネ構造をシリンダケースに組み付けた状態で、シリンダケースとハウジングに相当するガラスプレートを接合することにより、シリンダケース、ピストン、ガラスプレートで密閉された燃焼室を有するエンジン本体の加工組み立てを完了した。接合にはSiとAuの共晶接合を用いた。シリコンとガラスプレートの接合・剥離実験により、接合界面の強度がエンジンの設計燃焼圧(1.2MPa)に十分耐えることを明らかにした。PC制御の電磁バルブからパルス状の高圧N2ガスを組み立てたエンジンの燃焼室に直接供給することによりピストン-バネ構造の動作を確認した。パルス状N2ガスの周期は1から5Hzである。ピストン-バネ構造はN2ガスのパルス圧とバネの復元力が釣り合うことによりスムースな往復運動を示した。また、N2ガス圧に対するピストン-バネ構造の変位をレーザードップラー振動計で計測した結果、設計値に近い圧力-変位直線を得た。以上の検討から、エンジンのピストン-バネ構造がピストンに要求される十分密閉された空間での往復運動を実現できることが明らかになった。この実験事実は、今後の燃焼実験に対して有益な情報を与えた。エンジンの加工組み立てと並行して、マイクロスパークプラグによる火花点火実験を行った。その結果、1から100Hzの範囲の任意周期で火花点火が可能であることを確認した。エンジンの自立運転を実証するために、マイクロ加工を応用したガラス製のマイクロ燃焼室を試作し、マイクロスパークプラグによる水素ガス燃料の着火・燃焼実験に着手した。
|