研究概要 |
潤滑剤には表面保護のための吸着性と低摩擦のあめの流動性が必要であるが,これらは互いに相反する性質であるため,個々の分子にこれらを同時に期待することはできず,吸着性を受持つ固定層と流動性を受持つ流動層の二層構造にしなくてはならない.ただし,昨今の状況から潤滑膜は分子オーダーでなるべく薄いことが要求されるため,究極的にはそれぞれが単分子層程度からなる二分子層潤滑膜開発が重要となる.固定層の膜厚は溶液の濃度,ディスクの溶液への浸漬時間,浸漬・引上げ時間そして後処理としての熱処理時間に依存する.本年度はこれらを変化させて固定層の膜厚制御を行い,その結果として,約4Åから15Åまで1Åの制度で制御する技術を開発した.この固定層の上に流動層を0Åから30Åまで変化させて被覆し,この二分子層潤滑膜試料を用いて,摩擦係数および耐久性を評価した.その結果,(1)固定層は密なほど摩擦係数は低く耐久性は高い,(2)総膜厚が一定の場合には固定総率(bonded ratio)が高いほど摩擦係数は低く耐久性は高い,(3)固定層,流動層いずれも厚さが15Å,すなわち単分子層厚さのときに摩擦特性,耐久特性共に最も優れていることを見出した.続いて,SAM(自己組織化単分子膜)を用いて複合構造ナノ潤滑膜の開発に取組んだ.これはSAMにより二次元パターンを形成し,これとフッ素系潤滑剤とを用いる方法である.スクラッチ試験機による評価の結果,層膜厚が10Å〜20Åの場合には,開発した複合潤滑膜のほうが従来のフッ素系潤滑膜より高い強度を示すことがわかった.今後は実用化の観点からこの複合潤滑膜の信頼性,実用性評価を行う.
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