研究概要 |
本研究では,高密度光による火炎制御と光スペクトル計測による光と火炎の干渉機構の解明を行なうために,高出力のレーザ光パルスを集光し集光位置付近でプラズマを形成させ,レーザ励起ブレイクダウンの詳細過程について調べた。 まず最初に,レーザ励起ブレイクダウンによる可燃性予混合気の着火過程を解明するために,ブレイクダウン現象の基本特性を解析した。特に,パルス光のプロファイルや集光レンズの焦点距離がブレイクダウン現象におよぼす影響について検証を行った。その結果,Nd:YAGレーザはフラッシュランプの励起エネルギーを最大にした際に出力が最大となり,トップハット状の空間プロファイルとなっているが,励起エネルギーを減少させることで,プロファイルがガウシアン分布に近づき,励起エネルギーを最大にした場合よりもブレイクダウン閾値が低くなる場合があることが分かった。 次に,カセグレン光学系とストリークカメラを用い,ブレイクダウンに伴い形成されたプラズマからの自発光スペクトルを高い時間・空間分解能で時間連続測定した。その結果,ブレイクダウンにより形成されたプラズマには,レーザ光軸方向に沿って,その形成過程や温度の時間プロファイルに関して異なる振る舞いを示す3つの領域が存在することが分かった. 最後に,ブレイクダウン現象に対して集光光学系がおよぼす影響,特に集光レンズの収差の影響を解析した.その結果,収差のない理想的な結像光学系として扱える近軸領域では,レーザ励起ブレイクダウンの閾値は焦点距離fが短いほど,レーザ光の初期ビーム径Dが大きいほど低くなる.しかし,光線追跡を行った結果,焦点距離f=50mmの平凸レンズで初期ビーム径D=8mmのパルス光を集光した場合,近軸領域で取り扱うことはできず,球面収差の影響を受けることが分かった.
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