研究課題
生体組織の凍結保存を成功させるためには、凍結時に細胞膜の内外に生成する氷晶による致命的な損傷(凍害)を防止する必要がある。そのため、凍結過程での冷却速度を適切に制御すると同時に、有効な凍害防御剤を選定して氷核の生成を抑制しなければならない。凍結保存の一連の過程を通じて細胞の生存を支配する現象には、(1)浸透圧ストレス(細胞の過膨張・過収縮)、(2)細胞内凍結、(3)細胞外で生成した氷晶による力学的ストレス、(4)生化学的毒性などが考えられる。理想的な凍害防御剤とは、これらすべてをあらゆる冷却速度において回避できる能力をもつものと考えられる。すなわち、冷却速度によらず、細胞内の凍結を抑制する効果をもち、かつ細胞外では凍結しないか、凍結しても氷晶が十分に小さく、細胞を圧迫しないというものである。本研究の第一の目的〔テーマ1〕は、上記(1)〜(4)を回避できる凍害防御剤を選定し、さらに電気融合などの能動的方法を適用して凍害防御剤を速やかに細胞内に取り込むことによって、上記(2)の防止を実現することである。第二の目的〔テーマ2〕は、凍結過程での生体細胞の活性評価法の確立である。本研究では、蛍光顕微鏡による光学的観察や、細胞内のアデノシン3りん酸(ATP)量の検出、さらに超音波を用いた細胞の力学的特性の計測など、実時間での活性評価法の確立をはかった。これら2テーマに関するこれまでの研究成果の概要は次の通りである。〔テーマ1〕:上述の条件を満足する候補物質としてトレハロースを選択し、(1)細胞膜上のチャネルを通じた細胞内への導入、(2)トレハロースを内包したリポソームの細胞内への導入、について実験を行った。これらのうち(2)については、静電泳導と電気融合法によりJurkat細胞との融合を確認した。〔テーマ2〕:生体細胞を用いた実験に先立ち、アルギン酸と塩化カリウムを用いて擬似細胞を作り、凍害防御剤の効果及び凍結時の氷晶の形成・成長と、氷晶による損傷発生過程の顕微鏡による観察を行った。また、同じ観察を生体細胞についても行った。さらに、これまでに開発した超音波パルス法による軟組織の力学的特性測定法をさらに発展させた、マイクロタクタイルセンサを製作し、卵細胞のような微小生体組織の「柔らかさ」の時間的変化の測定に成功した。
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日本機械学会論文集(B編) (印刷中)
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