研究概要 |
本研究の目的は,ミトコンドリアの生体膜に存在するATP合成酵素のうち,膜内在性部分のFoモータの回転特性を解明するために,マイクロ・ナノマシン技術を用いて,一分子レベルで計測する技術を確立することである。 本年度は,平面膜中に膜タンパクを組み入れる実験系の検討を行った.大きさ約100ミクロン程度の微小孔に,有機溶媒中に溶かした脂質をバッファで挟むことによって製作し,この平面膜を顕微鏡下で観察する実験系を組み上げた.これをマイクロシステム中で応用するために,シリコンで微細な流路を形成し,バッファと有機溶媒を交互に流すことによって,流路内部に存在する微小貫通孔へ脂質2重層を形成することに成功した.さらに,これらの平面膜内に膜タンパク質を導入する実験にも着手した.本年度は,アラメシチンと呼ばれるペプチドを直径約1ミクロン程度のリポソーム内に精製し,これを平面膜が形成された領域に注入することによって,リポソームと平面膜が自然融合する性質を利用して,ペプチドを膜内に導入することに成功した.さらに,融合後に電圧を膜を介して印加することによって発生する,アラメシチンを通じたチャンネル電流を計測すること成功した.これらの実験系をさらにマイクロ・ナノ加工技術を用いて集積化することによって,より安定した膜を形成できると予測される結果となってきた. これらの内容は,国内・国際学会によって,数多く発表され,国内外で高い評価を得た.
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