研究概要 |
本年度はまず,論理回路を書き込むことができるVLSIであるFPGAに,仮想レオロジー物体の計算アルゴリズムを実装し,高速な変形計算を実現した.昨年度進めた変形計算の並列パイプライン化アルゴリズムを,今年度購入した600万ゲート相当のFPGAボードに実装した結果,1000点規模のレオロジー物体の変形計算を,msecオーダで実現できることが判明した.また,固定小数点の演算において,適切なスケーリングを行うことにより,PC上での浮動小数点を用いた計算に近い計算結果が得られることが実証できた. 次に,変形形状と分布力の同時計測により,実際のレオロジー物体の物理パラメータを推定する手法を開発した.特に,弾性が非線形性を有する場合に,パラメータを推定する手法を考案し,実際に推定が可能であることを確認した.三次元変形形状と力の計測データから,randomized algorithmを用いて,レオロジー物体の物理パラメータを推定するとともに,実験で得られた変形形状と変形シミュレーションとの比較し,推定パラメータの妥当性を検証した. さらに,力覚提示装置PHANToMを用いて,仮想レオロジー物体の変形と力覚を提示するシステムを構築した.構築には,田中研究室と登尾研究室がすでに所有している装置,新規購入の装置を用いた.ペナルティ法を用いて,PHANToMに作用する力を計算し,計算した力を提示した.仮想レオロジー物体を人間に提示する実験を行ったところ,レオロジー的な変形特性は提示できるものの,PHANToMに生じる振動のため,仮想レオロジー物体操作における人間の特性を評価できるほどの精密な提示は困難であることが判明し,振動を抑制する手法が必要であることが明確になった.
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