研究概要 |
本研究課題の目的は,実世界に数多く存在する柔軟なレオロジー物体と,同等の視触覚情報を人間に提示するために必要な基盤技術を確立することである.レオロジー物体とは,レオロジー的特性を有する三次元物体であり,血管や筋肉などの生体組織や食品がその代表的な例である.本研究では,まず,レオロジー変形のパーティクルベースモデリングを確立した.位相保持と体積効果を導入することにより,レオロジー変形を安定に計算できるパーティクルベースモデリングに成功した.次に,FPGAによる仮想レオロジー物体のリアルタイム変形計算を実現した.パーティクルベースモデルにおける変形計算をFPGA(Field Programmable Gate Array)に回路として実装し,PCより二桁高速な,仮想レオロジー物体のリアルタイム変形計算を実現した.また,視触覚提示のための仮想レオロジー物体のキャリブレーション手法を確立した.レオロジー物体の三次元変形形状と物体に作用する力を計測するシステムを構築するとともに,randomized algorithmを用いて,パーティクルベースモデルの実際のレオロジー物体の計測値から,力学パラメータを同定する手法を確立した.さらに,連続体力学に基づく物体変形のパーティクルベースモデリングを考案した.ポワソン比が0.5という非圧縮性の場合に,CSM(Constraint Stabilization Method)を用いて,非圧縮性をモデリングし,非圧縮性変形を安定に計算する手法を提案した. 以上のように本研究課題では,1)パーティクルベースモデリングによるレオロジー物体の大変形モデリング技術の確立,2)FPGA(Field Programmable Gate Array)によるリアルタイム変形計算,3)レンジファインダと分布圧センサを用いたリアルタイム変形計測法の確立,4)Randomized Algorithmによる仮想レオロジー物体のモデルパラメータ同定技術という成果を得た.得られた成果により,厚さが10分の1に圧縮される変形過程のシミュレーション,1000点規模のパーティクルベースモデルのビデオフレームレート実行,変形誤差10%以内のモデル同定が可能になっている.
|