研究概要 |
本研究では,超伝導変圧器に超伝導限流器の機能を複合多機能化した「超伝導限流変圧器(SFCLT)」を高温超伝導バルク導体を用いて設計・製作し,電力システム導入効果(漏れインピーダンスの低減による定態安定度向上と故障電流の抑制による過渡安定度向上との両立)を実証することを目的としている.本年度は,3相275V/105Vの高温超伝導限流変圧器(HTc-SFCLT)を設計し,その1相分を試作するとともに基礎的特性を取得した. 試作したHTc-SFCLTの低圧側コイルはBi2212高温超伝導バルク導体とCuNiシャントとの複合構成であり,円筒状バルクチューブから切削加工することによってコイル形状とし,エポキシ樹脂で含浸した.一方,高圧側コイルには銅線を用い,低圧側コイルの外側に同心状に巻回した.低圧側コイルおよび高圧側コイルを鉄心脚に配置して大気圧液体窒素中に浸漬することにより,HTc-SFCLTを構築した. 直流大電流電源を用いて低圧側コイルの直流臨界電流を測定し,供試超伝導コイルの基礎的特性を取得した.また,HTc-SFCLTの超伝導変圧器としての無負荷試験と短絡試験を行い,巻数比と漏れインピーダンスが設計値通りであることを確認した.これにより,試作したHTc-SFCLTが超伝導変圧器として機能していることを検証することができた. さらに,HTc-SFCLTの電気絶縁性能を評価するために,HTc-SFCLTの電気絶縁構造を模擬したモデル電極を製作した.供試モデル電極に電界と熱との複合ストレスを与えて部分放電および絶縁破壊特性を取得するとともに,HTc-SFCLTの電気絶縁設計に対する技術的指針を与えた. 今後,HTc-SFCLTに臨界電流値以上の交流大電流を通電することによって超伝導限流器としての機能を評価し,3相モデル器の試作・試験および系統シミュレータによる電力システム導入効果の実証を行う予定である.
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