研究概要 |
高強度・超短パルスのレーザ光の照射に生体組織のアブレーションは,生体に対して,安全・無痛など,従来に無い効果が期待される.近赤外波長帯においては,フレキシブルな光伝送装置としては,通常石英ファイバが考えられるが,例えギガワット(GW)級出力のNd : YAGレーザ光でさえ,ファイバ入射端面の破壊や、コア材の非線型性によるコアの溶融などをもたらしてしまうため、GWオーダでさえ,その実用は制限される.さらに超短フェムト秒パルス伝送を考えれば,光ファイバの分散により,パルス拡がりが大きくなり,フェムト秒のメリットは全く生かされない. 本研究では,誘電体内装金属中空ファイバを用いることにより,近赤外波長帯でのフェムト秒レーザ,及び高出力Nd : YAGレーザ用のフレキシブル伝送システムを構築することを目的とする. 本研究では本年度において,以下の研究を行なった. 1.超鏡面・高強度を有する銀中空ファイバの製作法 近赤外波長帯に於いて,低損失中空ファイバの基礎となる,超鏡面を有する金属パイプを実現するために,従来の銀鏡反応の見直しを行った.その結果,塩化スズ水溶液を用いて前処理を行うことにより,銀薄膜の表面粗さが低減されることが明らかになった.またこの銀鏡反応により,強度が劣化するのを防ぐために,ポリマー保護層を付加したファイバについても検討を行った. 2.誘電体ポリマー膜の成膜機構の研究と一様成膜の実現 誘電体膜として,ある種のポリマーは近赤外波長帯で適していることが分かってきている.しかし,その成膜機構は必ずしも十分は把握されておらず,このことが低損失化を阻んでいる.そこで,さまざまな成膜条件を実験的に検討することにより,その成膜機構を明らかにし,より高い一様性を持つ,ポリマー薄膜の生成を実現した.
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