研究概要 |
本研究では,低消費電力マルチバンドアーキテクチャ実現のため,電流モードプログラマブルデバイスを応用して,電流モードソフトウェア無線(SDR)用アーキテクチャを提案・設計している.今年度は,特にその要素技術の確立を目指した. まず,SDRアーキテクチャのキーデバイスの1つである,電流モード信号処理用高速動作電圧電流変換回路を提案した.差動入力構成を用いることにより,DC(直流)オフセット誤差の小さい回路構成を考案した.次に,考案した回路を実際のLSIとして設計・試作した.試作したLSIを実測評価した結果,DCオフセット電流を0.2μmに抑えることが可能となり,十分実用性を有していることを示した. また,電圧電流変換回路と同様に重要なデバイスである,電流モードシリアル・パラレル変換回路,およびパラレル・シリアル変換回路の提案を行った.従来の回路構成では,用いるカレントメモリ回路において,チャージ・インジェクションによる電流転送誤差が発生しており,伝送特性の劣化が課題であった.そこで,本研究の提案では,カレントメモリ回路に新たにダミーMOSFETを用いることで,チャージ・インジェクションの影響の軽減を行い,伝送特性の向上を図った.次に,計算機シミュレーションを行い,ダミーMOSFETのゲート幅の設計を行った.ダミーMOSFETとスイッチMOSFETの比を1:2にした場合に,転送誤差が最小になることを明らかにした.また,このシミュレーション結果を元にLSIを設計・試作し,実測評価した結果,計算機シミュレーションと同様にLSIが動作していることを確認した.
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