研究概要 |
本研究では,低消費電力マルチバンド・マルチモード変復調アーキテクチャ実現のため,電流モードプログラマブルデバイスを応用して,電流モードによるソフトウェア無線(SDR)用アーキテクチャを提案・設計している.今年度は,特にその要素技術である電流モード回路の検討を行った.さらに,今後の端末の経済化・小型化・高周波数化のために必要な技術として,高密度多層樹脂基板を用いた高周波帯信号伝送用平衡型ペア線路の研究を行い,LSI開発にとどまらず,実装技術まで含めたシステム全体に必要不可欠な技術の確立を目指した. まず,SDRアーキテクチャのキーデバイスの1つである,電流モード信号処理回路の検討を行った.従来の回路構成では,用いるカレントメモリ回路において,チャージ・インジェクションによる電流転送誤差が発生しており,伝送特性の劣化が課題であった.そこで,本研究の提案では,カレントメモリ回路に新たにダミーMOSFETを用いることで,チャージ・インジェクションの影響の軽減を行い,伝送特性の向上を図った. また,高密度多層樹脂基板を用いた60GHz帯信号伝送可能な平衡型ペア線路を提案した.まず,従来の非平衡型線路ではビアのインピーダンスミスマッチにより,ミリ波帯信号の伝送が困難であることを示した.さらに,平衡型ペア配線構造において,表層のマイクロストリップライン,内層のストリップライン,各層を接続するビアを,同一の線路間隔で,かつ同一の特性インピーダンスとなるように設計することで,90GHz帯まで信号伝送可能であることを示した.
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