研究概要 |
スピントンネル素子の磁性層を結晶性のNiFeからアモルファス材料であるCoFeBに替えることによって,MR比が数%から20%以上に向上するとともに,再現性も大幅に改善することが分かった。これは,結晶粒界のないCoFeBの方が界面の平坦性が向上するためと考えられる。次に,金属Al層の酸化方法をDC酸化とRF酸化の2つの場合についてスピントンネル素子の作製を行い,最適な絶縁層の形成方法について検討を行った。DC酸化の場合には,Al層が比較的薄い1.3nmまで,良好なMR特性を示し,Al層厚1.4nmでは,30%の変化率が得られた。また,作製した7つの素子間のばらつきも非常に小さく,再現性も良いことが分かった。一方,RF酸化の場合には,1.6nmでは15%のMR変化率を示したが,Al層厚が薄くなるとMR比は低下してしまい,良好なトンネル接合は形成されなかった。素子間のばらつきも,DC酸化のときよりかなり大きくなった。これらの特性は,DC酸化の方が,Al層の酸化方法として優れていることを示しているが,MR比のバイアス依存性については,DC酸化の場合の方がMR比の低下が著しく,DC酸化にも問題があることを示している。これらDCとRFのMR特性の差異は,Al層の酸化状態,特に酸化Al層と磁性層界面の物理的,化学的状態の違いに起因するものと考えられるが,その詳細な評価は,今後の課題である。さらに,これらの素子の耐熱性を調べたところ,MR比は,300℃までは変化せず,300℃を越えると単調に低下して500℃でほぼゼロとなることが分かった。
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