研究概要 |
CoFeBアモルファス磁性層をもつスピントンネル素子をメタルマスクを利用して作製した。磁性層を結晶性のNiFeからアモルファス材料に替えることによって,磁気抵抗特性の再現性が向上するとともに,MR変化率が大幅に大きくなった。また,金属Al層を酸素DCプラズマ中で酸化した場合には,Alを1nm程度まで薄くしても,優れた磁気抵抗特性を示したが,接合抵抗が数Ω程度まで低下したため,障壁幅や障壁高さを正確に評価することは,困難であった。そこで,フォトリソグラフィ技術を利用して。接合面積を小さくして,接合抵抗を上げることを試みた。電子ビームリソグラフィにより,ガラス基板上にフォトマスクを作製し,マスクアライナでパターンを焼き付け,ECR-Arイオンビームによって物理エッチングを行って,パターンの形成を行った。その結果,10ミクロン角までは,設計値どおり微細加工することができるが,5ミクロン角では,エッジのダレが目立つことがわかった。これについては,現在,パターンの露光条件の最適化に取り組んでいる。また,接合抵抗を測定したところ予想した値より1桁程度,低い値を示し,この値は,接合面積ではなく,接合部外周の長さにほぼ逆比例することが分かった。これは,接合部に流した電流が,接合部全体でなく,接合のエッジ部を流れていることを示している。さらに電圧-電流特性がオーミックであることからも,エッチング時に酸化Al層の側壁に付着した金属原子が,電流をバイパスしていることを示している。以上より,スピントンネル素子の微細加工には,加工した側壁への金属付着物の低減が非常に重要であることが明らかとなった。この点については,エッチング後に側壁を酸素プラズマに晒すことによって,金属付着物を酸化して,電流パスを遮断することを検討している。
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