研究課題
BB84プロトコルを実装した際の雑音への対処として有用である、誤り訂正と秘匿性増強を同時に達成する符号をLDPC符号により実現した。関連研究としては、Mackayらによる代数的LDPC符号の研究が挙げられる。本研究で構成した符号では親となる符号C1としてQuasi-Cyclic LDPC符号を用いる。問題はC2の双対符号をどのようにLDPC符号として実現するかであるが、それに関してはNNCPと呼ばれる計算量の研究で知られた問題の漸近的解法を利用した。NNCPは重み最小となる符号語をひとつ以上与える問題だが、漸近的手法として重みの小さい符号語を複数探索しその中の最小のものを求めればそれが高い確率で最小であるものと一致するというものである。つまり、重みの小さい符号語を集めることが可能となる。C2の双対符号のパリティ検査行列は、C1の符号語により構成されることに注意すれば、C2の双対符号をLDPC符号にする為にはC1の符号語で重みの小さいものを並べたものをパリティ検査行列として定義すればよいことになる。この手法を用いて符号長705のarray-type LDPC符号をC1としてC2の双対符号を構成し、シミュレーションにより性能評価した結果が以下の表である。横軸が量子通信路の雑音、縦軸がブロック誤り率を表す。この符号の符号化率は約0.266である。上の桃色の線が、秘匿性増強との関係を表し、この2倍の値までの情報しか盗聴されないことが知られている。また、下の青の線は鍵の整合性を表している。ブロック単位でみたとき、鍵に誤りが発生する確率となっている。量子通信路の雑音が1.3%程度のとき、盗聴者の持ちうる情報量は鍵1ビットのうち0.01ビット程度しか得られない。また、705ビット長の鍵を3000回共有した際に1回程度の誤りしか発生しないと期待できる。
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