研究概要 |
ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)を放射源としたマイクロ波励起プラズマ酸化法を用いて、熱酸化膜つきSi基板上に、下部電極/MnIr/CoFe/Al-O/CoFe/NiFe/上部電極、の構造の強磁性トンネル接合膜を形成した。すべての金属膜は、超清浄雰囲気スパッタ法で作製した。絶縁膜の形成は、15Å厚の金属Al膜を堆積させた後に上記RLSAを備えたプラズマ酸化室で、X+O_2(3%)(X=He, Ar, Kr)の混合ガスプラズマを用いて10〜40sの範囲で酸化処理を行った。Al膜のプラズマ酸化時における混合希ガスの種類を変化させた理由は、混合希ガスの励起エネルギー準位はそれぞれ異なるため、酸素ガスとの混合プラズマ中においては、酸素ラジカルやイオンなどの励起される酸化種が変化することが予想されるため、プラズマ酸化時の混合希ガス種の変化によって、絶縁障壁層の特性が変化し、それに伴ってTMR効果が変化する可能性があるからである。作製したトンネル接合膜のTMR比の熱処理温度依存性は、Ar+0_2混合ガスプラズマで作製したトンネル接合の場合は、250℃までの熱処理温度上昇に伴って、TMR比が徐々に増大し、最大で50%の値を示した。一方で、He+0_2ならびにKr+0_2混合ガスプラズマで作製した接合では、プラズマ酸化時間の増大に伴って、TMR比が最大値をとる熱処理温度が増大してゆくことがわかった。さらに、TMR比の最大値にも増大が認められ、Kr+0_2混合ガスプラズマを用いて13s酸化して作製した試料では、最大のTMR比58.8%が得られた。この値は、従来報告されているTMR比の最大値を20%程度上回る世界最高値である。
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