研究概要 |
スピントンネル型磁界検出素子の低抵抗・高出力化を目指し、ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)を放射源としたマイクロ波励起プラズマ酸化法を用いて、熱酸化膜つきSi基板上に、下部電極/MnIr/CoFe/barrier/CoFe/NiFe/上部電極、の構造の強磁性トンネル接合膜を形成した。すべての金属膜は、超清浄雰囲気スパッタ法で作製した。Barrier膜の形成は、8〜15Å厚の金属Al膜を堆積させた後に上記RLSAを備えたプラズマ処理室で、X+O_2,X+N_2 (X=He,Ar,Kr)の混合ガスプラズマを用いて酸化もしくは窒化処理を行った。既に報告したとおり、Al膜厚15Åの場合のAl-O barrierを有するトンネル接合膜のTMR比は、300℃の熱処理後に最大58.8%を示す。これに対して、Al膜厚8Åの場合に被酸化Al膜厚比に応じたプラズマ酸化条件化で作成したトンネル接合膜では、300℃を超える熱処理ではじめてTMR比が観測され、下部強磁性電極表面の酸化(いわゆる過酸化)が生じていることが明らかとなった。このことは、金属Al膜の酸化過程が膜厚方向に線形に進行せず、Al膜の極表面に酸化膜がすばやく形成されることを意味している。スピントンネル型磁界検出素子の低抵抗化にはbarrier膜の極薄化が必須であり、その形成プロセスの制御性を向上させるために、Al膜の窒化プロセスの詳細な検討を行った。上記RLSAを用いて作製したAl-Nbarrierを有するトンネル接合膜では、Al膜厚10Åの場合に従来報告の最大値33%を大きく上回る49%のTMR比が得られると同時に、金属Al膜のプラズマ窒化プロセスは、プラズマ酸化プロセスに比して緩やかに進行するため、極薄絶縁膜の形成プロセスとして有利であることを明らかとした。
|