研究概要 |
スピントンネル型磁界検出素子の低抵抗・高出力化を目指し、これまで、ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)を放射源としたマイクロ波励起プラズマ酸化・窒化法を用いて、熱酸化膜つきSi基板上に、下部電極/MnIr/CoFe/barrier/CoFe/NiFe/上部電極、の構造の強磁性トンネル接合膜を形成してきた。本年度は、これまでのバリア層形成方法に加えて、高濃度オゾン酸化法を用いた極薄金属膜の酸化過程に関して詳細な検討を行うと同時に、同手法を用いて作製したトンネルバリア層を有する強磁性トンネル接合膜の磁気輸送特性に関して検討を行った。オゾン酸化法は、被酸化金属膜表面でオゾン分子が酸素分子と解離して生成する酸素原子を酸化種とする酸化法であり、従来検討を行ってきたプラズマ酸化法における主酸化種(酸素原子ラジカル)と異なる。酸素分子を酸化種とする自然酸化法を交えて比較すると、各酸化種のエネルギー順位は、大きいものから、原子状酸素ラジカル、酸素原子、酸素分子の順になり、オゾン酸化法はプラズマ酸化と自然酸化の中間に位置する。オゾン酸化法による極薄Al膜の酸化過程は、プラズマ酸化法におけるそれとは大きく異なり、酸化の極初期段階に形成される反応律速酸化膜厚はほぼ同様であるものの、酸化膜申の酸化種の拡散速度に律速される酸化速度定数(放物線速度定数,k_p)は、Krを希ガスに用いたプラズマ酸化法のそれに比較して、およそ2桁低いことが判った。このことは即ち、極薄の金属膜を制御性良く酸化させて、トンネル障壁層を形成するプロセスとして、高濃度オゾン酸化法が適していることを明らかにしている。
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