研究概要 |
平成14年度は、PCE分解活性を持つClostridium Bifermentans DPH-1株(以下DPH-1株菌と呼ぶ)の土中移動特性をカラム実験で追跡した.実験はカラムからの流出水中DPH-1株濃度の変化を計測する方法とFISHおよびPCR法による土壌DNA解析に基づき土中のDNA濃度分布を計測する方法で行った. 流出水中のDPH-1株は吸光度計を使った濁度に基づくたんぱく質量に着目し,実験結果を解釈するために土中の流れ場を可動水と不動水に領域区分できるTwo Region Model(以下TRMと呼ぶ)を下敷きにした.土中に注入するDPH-1株量が増加すると,可動水割合が急激に減少し,可動水から不動水への物質移動時間に対する可動水滞留時間の比が急激に増加することがわかった.分散係数はDPH-1株の濃度に影響されず一定値をとり,流速依存性も認められなかった.DPH-1株菌の可動水を介する移動性が低いことから,DPH-1株を効率よく土中輸送するためには,複数の注入孔からなるべく低濃度のDPH-1株菌を間欠的に注入する必要がある. 土壌DNA解析をFISHおよび定量的PCR法に基づき実施し,カラム土壌を4分割採取し,土中DNA濃度を推定した.カラムへの流入速度,流入菌量を変化させて実験を行い,DPH-1株を反映する土中DNA濃度が均質に分布するのではなく,流入端から流出端にむかって徐々にDNA濃度が減少することが判明した.また,カラム進入直後に急激にDPH-1株量が減少し,流入菌体量の2%程度しかカラムから流出しないことも明らかになった.しかし,流出水中のたんぱく質量のTRM解析で推定されるDPH-1株の土中分散特性とPCR法に基づくDNA濃度の土中分布から推定される分散係数はほぼ同じ値となり,DPH-1株の土中移動は物質輸送現象で用いられている移流拡散モデルが利用できることを確認した.
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