研究概要 |
平成15年度研究実施計画に沿って研究実績の概要を報告する. 1.地下水流動場における微生物の増殖・死滅を考えた有機塩素化合物の物質輸送構造 1-1.遺伝子解析に基づくDPH-1株の定量評価と土中移動特性 (1)リアルタイム定量的PCR法(以下,RT-PCR法と呼ぶ)による土中DPH-1株のDNA量計測に成功した. (2)Bradford法に基づくタンパク質量とRT-PCR法のDNA濃度の比較によってRT-PCR法の精度検証を行った. (3)DNA濃度が高い(10mg/L以上)範囲ではRT-PCR法は土中DNA濃度を高めに,DNA濃度の低い(数mg/L以下)範囲では低めに濃度評価する傾向にあることが判明した. (4)DPH-1株の土中移動特性をBradford法に基づくタンパク質量で評価することによって,複雑な手順を経ず,微生物の土中輸送を事前設計する方法を見出した.提案法の適応土質範囲は砂から礫材料である. (5)嫌気性PCE分解菌18種類の検出用DNAマイクロアレイを開発し,実際の汚染サイトでの作動確認に成功した. 1-2.流れ場におけるDPH-1株のPCE分解特性の評価 (1)DPH-1株によるPCE,TCEの分解速度がMonod型酵素反応式でよく表現できることを確認するとともに,基質飽和定数の値をより現実的な値に修正することが出来た. (2)微生物増殖速度はPCE,TCEを基質と見なし,一次反応速度式でよく記述できることをバッチ試験で確認した. (3)DPH-1株によるPCE,TCEの地下水温度条件(15℃)での分解速度,増殖速度を解析し,30℃における最適分解速度の約1/2になることを見いだした. (4)DPH-1株によるPCE,TCE分解のための現場に対応できる安価な栄養塩として,モラセスの利用方法を開発した. 2.透過性浄化壁によるバイオレメディエーションの実地盤への適用 (1)砂と礫の浄化壁に対する微生物移動距離と時間の関係を簡単に推定できる図表を作成した.微生物が間隙に堆積する速度は,透過性浄化壁中を移動する微生物動態を支配する重要な要因で,透過性浄化壁形式でバイオレメディエーションを実施するときには,微生物の間隙内堆積速度の評価が大切になることが判明した.
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