研究概要 |
中国・渤海では,大量の未処理汚水が海域に流入し赤潮が多発しており,水質汚濁が深刻な状況である.しかし,渤海は大阪湾の約10倍の空間規模であり現地観測は極めて困難であるため,その現状が十分に把握されていない.そこで,本研究では,中国の研究者との共同研究を実施することによって,渤海および大阪湾における現況の水環境特性を明らかにするとともに,大阪湾研究で得た知識,経験を渤海の流動や生態系の研究に役立てることにより,沿岸域の水環境を保全するための統合型水管理システムの構築を目指すことを目的としている. (1)渤海の気象・海象データを収集・解析するとともに,3次元バロクリニック数値モデルによる流動計算を行った.その結果,渤海の流動・密度構造には気象擾乱が大きな影響を及ぼしていることがわかった. (2)大阪湾の水環境や環境創造に対する支援システムとして,GUI(Graphical User Interface)を用いた大阪湾環境情報システムOBEIS(Osaka Bay Environmental Information System)を構築した. (3)大阪湾湾奥部における貧酸素水塊の動態特性を検討するために現地調査を行い,底層における貧酸素水塊の拡大化が水温躍層によって制限されていることを示した. (4)大阪湾への栄養塩の輸送量を解明することを目的に,紀淡海峡において流動・水質の現地観測を行った.観測結果から,全窒素を除く水質の1潮汐平均断面フラックス構造は,流動構造と同様,湾外への流出が卓越していたことが明らかとなった. (5)低泥における有機物の分解,海水からの粒子態窒素・リンの沈降・堆積,底泥からの栄養塩の溶出機構を考慮した水質・底質モデルを構築した.
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