研究概要 |
1.気象外力,湖内流動,水位変動について,連結系汽水湖である中海-大橋川-宍道湖を一体的に検討し次の結論を得た。 気圧変化により日本海で生じた水位変動が中海内,大橋川上下流,宍道湖内の3区間に分けて検討した。中海,宍道湖内の水位変動は,長波の伝播速度で伝わる。一方,大橋川上下流端での水位変動の時間差は,異なる外力に起因する中海における水位変動の周期に関係する。 2.風の吹き寄せにより,中海,宍道湖において数センチメートルの水位変化が生じており,これを引き起こす抵抗係数の表現式を得た。水位変化は小さいが,これは,密度成層のある中海・宍道湖において大きな密度界面勾配を発生する。この界面の高さが,大橋川を経由して宍道湖に出入りする塩水の流動とそれに伴う水質に大きな影響を与えている。 3.中海の塩分水が,宍道湖に到達する条件は,二つの湖の水位差により決まる。水位差は,天文潮よりも気象潮成分が大きいため,塩水の流入に及ぼす気象潮の影響が大きく遡上時に長時間にわたって,中海から塩水が宍道湖に流入を続ける。 4.宍道湖の水質に大きな影響を及ぼすと考えられる20psuを超える高い濃度の塩分水の遡上・流入は,湖上に強い西風が長時間吹き続く期間に見られる。 5.中海から大橋川を遡上し宍道湖の東部湖棚部(平均湖底勾配,2,500分の1)に進入する高塩分水は,最初の350〜400m/hから150〜300m/hに変化しながら湖心に向かって進む。しかし,(5〜10)m/sの東風が卓越すると,密度海面に傾きが生じ,湖底の高塩分水は,宍道湖東部へ移動する。
|