研究概要 |
初年度は,研究目的として掲げた4テーマに関して,下記の研究成果を得た。 1.環境適応する建築の設計・制御手法の提案 河村:環境適応型のリカレント建築システムのパラダイムを提示し,その概要と問題点を明らかにした。新たな課題として,資源循環ネットワークのシステム設計,接合部変形集中型のリカレント耐震設計,ブロック構法の要素ブロックの力学性状,などへの取り組みを始めた。 谷:知的ファジィ最適アクティブ制御システムを提案し,頂部AMDの1層綱製供試体の振動実験とシミュレーションを行った。さらに,多層構造物への突発的な入力変化や弾塑性復元力特性を有する構造物への本手法の適用性を確認した。 新宮:比較的単純なOn-Off制御を利用したクラッチ式可変剛性構造物を提案し,シミュレーションと実験により検討した。また,動吸振器を有する質点系構造物に関し,ニューラルネットワーク利用の振動制御を行い,最適学習係数を検討した。 2.人間の嗜好を反映するインタラクティブな設計手法の開発 堤:大空間構造物では,構造骨組の美しさが構造物の美しさに大きく影響を及ぼすため,人間の美しさの感性をニューラルネットワークで学習し,遺伝的アルゴリズムの評価関数とし,美しさを考慮した感性最適設計支援システムの構築を行った。 新宮:多種多様な建築平面形態の分類を可能にする指標の提案し,いくつか建築平面形態を著者提案の修正ボックス・カウント法により分析した。 3.創発的な郁市のモデリングとシミュレーション 朝山:起業などの自然発生的要素と,土地利用計画などの人為的要素が相互的作用しながら商業地域を形成するプログラムを開発した。また,大阪市と京都市の土地利用現況図や昼間人口を含む都市データを調査・収集し,デジタル画像化した。 奥:地球環境を考慮して都市のコンパクト化が模索されている。セル・オートマトンを適用し,宅地の再配置によるコンパクト化の形成過程をシミュレーションし,そのコンパクト形態の特徴を明らかにした。 瀧澤:建築・都市空間の大規模なマルチエージェントシミュレーションを行うための並列分散型計算システムを構築し,それを用いて,バージェスの同心円的土地利用モデルを再構築した。 4.社会組織のモデル化と分析 谷本:人間-環境-社会システム工学の構築を目指し,本年度は,(1)大学・学会モデル,(2)談合モデル,(3)人間-環境-社会システムのプロトタイプモデルの3つを取り上げ,マルチエージェントシミュレーションを行った。 藤井:人間-環境-社会をシステムとして説明する方法を構築中で,本年度は各計算モジュールの連成,行為者モデルへの学習機構の導入を試み,人間-環境-社会系計算モデルの枠組みを構築した。応用として学術組織の衰退の抑制や地球環境共生型持続的社会の実現を目標に据えたシミュレーションを行った。 瀧澤:鹿児島建築市場における,新しい自律分散的な住宅生産のスケジューリング手法を調査し,マルチエージェントモデルを用いて,不確実性に対する頑健性をプロジェクトの多重性と関連づけて分析した。
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