現在用いられている結晶材料のほとんどは構造材料、機能材料を問わず、液相からの凝固で製造されている。従って、結晶材料の特性は凝固の段階でほぼ決定されていると言っても過言ではない。これは、Siを例に取れば明らかである。高純度の無欠陥の単結晶が凝固時に得られなければ、以降にいかなる手段を尽くしても使用に耐えるような特性は得られない。このように、凝固過程を制御することは、すぐれた特性を有する結晶材料の製造あるいは開発にとって極めて重要である。凝固過程の制御のためには凝固のフロントである固液界面の挙動に関する詳細な知識を持つことが必須である。本研究は、透過電子顕微鏡内その場加熱実験により、固液界面を高分解能で観察するのみならず固液界面近傍での固液両相内での不純物・合金元素の分布を解析した。 本研究においては液体をいかに薄膜状態に保持するかという点である。この目的のためには薄膜を強力な膜で被覆する必要がある。本年度は被膜の選定と最適厚さを決定した。被膜としては種々検討した結果、ハイドロカーボンが最適であり、その最適厚さは用いる試料にも依存するが、30nmから80nmであることを示した。 また、この手法を半導体デバイスにおけるPb-Snおよび無鉛はんだ接合反応に適用し、接合反応過程で接合界面に垂直な筋状のボイドと球状のボイドが形成され、接合強度を劣化させることを示し、これらのはんだ接合界面近傍での界面の運動と組成分布の解析よりこれらのボイドがカーケンダルボイドであることを証明した。
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