研究概要 |
本計画では、次の課題に挑戦した。 1)2種クラスターを独立に生成・堆積できるプラズマガス凝縮クラスター堆積(PGC)装置の試作。 2)2種クラスターの混合比、衝突時期の制御・複合堆積と、構造、組織、接合状態の解明。 3)複合クラスター集合体の磁気的、電気的、光学的性質の解明と、機能材料の設計・合成。 本年度取り組んだ課題は、次の通りである。 a)プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置のスパッタリング室のカソードの配置を改良して、クラスター堆積面積を大幅に拡張させることができた(従来の装置の約20倍)。 b)2源PGC装置を用いて基板上にFeクラスターとAlあるいはNiクラスターを複合堆積させ、透過電子顕微鏡により構造、組織を観測した。両者の衝突時期が早いとき、AlクラスターがFeクラスターを覆うコアシェル構造が形成されるが、NiクラスターとFeクラスターは合金化する傾向がある。また、Fe/Alコアシェルクラスター集合体についてX線光電子分光の測定を行い、異種金属の化学結合状態、クラスター表面の酸化状態を明らかにした。 c)PGC装置を用い,平均サイズ6-16nmのイオンならびに中性のFeクラスターを高い負バイアス電圧V_aを印加した基板上に強制着陸させた。得られたFeクラスター集合膜は、金属光沢のある平滑な表面を有し、酸化が抑制された。V_aの絶対値の増加とともに,飽和磁化M_Sや充填率Pが増加し,保磁力H_Cが急激に減少した:V_a=-20kVのとき,M_S=1.78Wb/m^2,P=バルクFeの86%,H_C<80A/m.また,V_a=-20kVのとき,Feクラスター集合膜の電気抵抗は,温度範囲T=20-300Kにおいて60-80μΩmとなり,バルクFeに比べて1桁高い.したがって,高密度充填Feクラスター集合膜は高周波帯域用軟磁性体として有望である。
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