研究課題
基盤研究(A)
非鉛系のビスマス層状構造酸化物の層状結晶格子を活用し、従来にない強誘電機能、異物性融合機能を発現させるための材料設計を行い、以下の成果を得た。1.格子欠陥制御による基礎強誘電物性制御指針の確立タンタル酸ストロンチウムビスマス系において、Sr欠損と過剰Biを含む単結晶で28μC/cm^2の著しく大きな残留分極を確認し、Srサイトへの空孔の導入による格子歪の増大によるものと確認された。また、Srサイトを置換する希土類元素の種類と置換量を制御することにより、ソフト〜ハードな特性を実現できた。チタン酸ビスマスのTi位置をWやNbなど高価数金属イオンで置換した単結晶では、酸素空孔濃度の減少とリーク電流の減少のため大きな残留分極を示した。酸素空孔濃度の減少を高温での導電率評価により確認した。一方、La置換体では自発分極は低減するが、多結晶体の残留分極は無置換体よりも増大した。第一原理計算により求めた欠陥生成エネルギーの値から、異元素置換により導入された酸素あるいは格子安定化によりペロブスカイト層の酸素欠陥量が低減することが明らかになった。これらより酸素欠陥生成が強誘電物性を支配することが実験的、理論的に明らかになった。2.交代相構造強誘電体の作製と物性評価チタン酸ビスマスとチタン酸バリウムビスマスの交代層構造の単結晶において、非鉛系ペロブスカイト系で最大の52μC/cm^2の残留分極が確認された。結晶中のBa欠損と過剰Biの存在、および酸化ビスマス層のBiの変位が大きな残留分極をもたらすことが示唆された。3.異物性融合機能の創製チタン酸ビスマスにMn置換した単結晶では、a軸方向で半導性、c軸方向で絶縁性と強誘電性を示し、分極状態を変化させると半導性が変化しそれが保たれる導電率のメモリー効果を初めて見出した。そのメモリー効果を鉛系ペロブスカイトにおいても確認でき、新たな機能素子への可能性を見出した。
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