研究概要 |
中空構造を有する高分子微粒子は,隠蔽剤,紙塗工剤や断熱材料,さらには薬品を封入することにより,マイクロカプセルとして広範な工業分野で応用されている。本研究代表者は既に独自に提起しているモノマー膨潤法を駆使することにより,ミクロンサイズの単分散中空粒子合成に成功している。この中空粒子の生成機構の検討過程でポリマー/溶剤間の相分離,及び界面への自己組織化が中空構造形成に重要であるという大変興味深い結果を得ている。本研究では,これら界面を利用した自己組織化現象による機構を詳細に検討することにより,粒子径ナノ〜ミクロンサイズと任意に設計できる機能性中空高分子微粒子の創製,薬効成分など含有した機能性複合微粒子創製法として確立していくことを目的としている。 本年度は,滴内に溶解させるポリマーの中空形成における役割について詳細に検討を行うため,重合の進行にともなう相分離挙動の解析を行った。その結果,滴内により高分子量,あるいは多くのポリマーを溶解させることにより,相分離が促進され,中空粒子が得られやすいことが明らかとなった。さらに,重合の進行にともなう架橋反応も相分離を促進させる要因の一つであることが実験結果と理論との比較により示唆された。しかし,滴内に溶解させるポリマーの量・分子量が増えると初期の滴内粘度が上昇することにより中空粒子の得られる最大粒子径が小さくなることも明らかとなり,重合により相分離したジビニルポリマーの界面へのスムーズな移行が中空形成において重要であることが示された。また,中空粒子のシェル層の強度についても実験結果と理論値に解析した結果,中空構造を維持できるシェル強度の閾値を計算することができ,その閾値以下では赤血球のようなへこみ粒子が得られるという興味深い結果が得られた。
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