研究概要 |
中空構造を有する高分子微粒子は,隠蔽剤,紙塗工剤としてや断熱材料,さらには薬品を封入することにより,マイクロカプセルとして広範な工業分野で応用されている。本研究代表者は既に独自に提起しているモノマー膨潤法を駆使することにより,ミクロンサイズの単分散中空粒子合成に成功しており,この中空粒子の生成機構の検討過程でポリマー/溶剤間の相分離,及び界面への自己組織化が中空構造形成に重要であるという大変興味深い結果を得ている。昨年度は,滴内に溶解させるポリマーの中空形成における役割について,重合の進行にともなう相分離挙動の解析を行い,より高分子量,あるいは多くのポリマーをあらかじめ存在させることにより,別途重合により生成するシェル層形成ポリマーの相分離が促進され,中空粒子が得られやすいことを明らかにした。 本年度は,機能性物質を中空内に担持させることを目指し,上記中空化技術を応用し,中空化溶剤として用いているトルエンの代わりに抗菌性・防カビ性などの薬効を有するヒノキチオールを重合時に同時に存在させることにより,一段階での機能性物質担持カプセル粒子の合成を試みた。その結果,シェル層ポリマーの形成をヒノキチオールが阻害しない条件を選択することにより,ヒノキチオールカプセル化微粒子の合成に成功した。このカプセル化粒子はヒノキチオールの蒸発を極端に低減し,薬剤徐放化に非常に有用であることを明らかにした。さらに,後処理法による機能生物質担持法として,あらかじめ得られた中空粒子内にペンタカルボニル鉄を含浸させた後,ペンタカルボニル鉄を熱分解させることにより磁性体であるマグネタイトをカプセル化した複合微粒子の合成にも成功した。
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