Ti-NiあるいはTi-Ni-Pd合金薄膜をそれぞれSiO2膜上に成膜し、ダイアフラム型マイクロアクチュエータ構造を作製した。アクチュエータ作製プロセスは、まず、Ti-Ni膜のコーティングされていないSiO2膜の正方形の領域を除去した。その正方形の窓から、Si基板を異方性エッチングにより反対側のSiO2膜に到達するまで除去することにより、膜厚が2ミクロンのTi-Ni膜と1ミクロンのSiO2膜からなる正方形のダイアフラム型マイクロアクチュエータを作製した。前年度に求めた最適熱処理を施し、Ti-Ni膜に形状記憶処理を施した。本年度は、特に動特性に着目し、アクチュエータ駆動のための加熱は通電により行い、通電のオンオフを繰り返すことでアクチュエータを駆動した。アクチュエータの動きはレーザービームを用いた非接触測定法で行った。Ti-Ni薄膜では、(a)変態温度ヒステリシスが20K以上と大きいアクチュエータと(b)変態温度ヒステリシスが数Kと小さいアクチュエータを作製した。Ti-Ni-Pd薄膜では、(c)変態温度ヒステリシスが10K程度と上述の2つの場合の中間であり、変態温度はTi-Ni二元合金薄膜よりも約50K高いアクチュエータが作製できた。アクチュエータの応答性を調べた結果、(a)の場合では20-30Hzいじょうになると振幅が小さくなった。しかし、(c)では変態温度が高いため、冷却速度が速くなった結果、100Hzでもかなりの振幅を示した。(b)では、変態温度ヒステリシスが小さいため、駆動に要する温度変動が小さくて良いため、応答性が改善され、100Hzでも1Hzの時と同じ振幅が認められた。以上の結果、100Hz以上の高速駆動が可能なマイクロアクチュエータの作製ができた。
|