研究概要 |
前年度に鍛造可能なオーステナイト系耐熱鋼の強化相としてGCP相(Geometrically Close-packed Phase)のD0_<22>型化合物とTCP相(Topologically Close-packed Phase)のLaves相が有望であることを見出した.そこで本研究ではFe-MNb3元系及びFe-Ni-Nb-V4元系合金を用いて,これら化合物相の相領域及び形態制御に関する研究を行い,以下の事を見出した. D0_<22>型化合物の形態制御: 前年度にモデル系として用いたD0_<22>型化合物Ni_3V-γ"の知見から,Niの一部をFeに,また,Vの一部をNbに置き換え,D0_<22>相の体積率を50%以上としたFe-Ni-V-Nb4元系合金を800℃で時効すると,A1(fcc)母相中に生成する(Fe, Ni)_3(V, Nb)化合物相の形態は角柱となり,これらがA1(fcc)母相と交互に配列したchessboard組織となる.この組織形態は,D0_<22>相のa軸の格子定数(a_<D022><a_<A1><c/2_<D022>)の母相に対するミスフィット(δ_a=(a_<D022>-a_<A1>/a_<A1>)が0.2以下の時に生じる.したがって,D0_<22>相の形態は格子ミスフィットによって制御できる.また,chessboard組織は高温長時間後も整合性を維持し,熱的安定性に優れる. A_2B化合物の析出制御: Fe-Ni-Nb3元系におけるγ-Ni(A1)/Fe_2Nb-ε Laves相(C14型構造)間の相平衡について調べ,Niはε相中には40at%以上も固溶し,Feサイトに置換すること,また,γ-Ni相と平衡するε相のNb濃度は約26at%となることを見出し,この3元系状態図を明らかした.また,ε相の格子定数a及びc軸はNiの固溶に伴い低下するが,a軸の減少の程度が大きいため,軸比c/aは増加する.a軸の減少は固溶元素の大きさ効果に起因し,一方c軸の大きな減少はNi-Nb間の強い結合力に起因する.したがって,ε相の軸比を母相の理想値(c/a=1.633)に近づけるためには,Fe及びNiよりもNbとの結合力が弱く,且つ,Feとの原子半径が大きく違わない元素を固溶させれば良いことを見出した.そのような元素にはCrがあり,Fe-Ni-Cr-Nb4元系合金においてLaves相がオーステナイト母相に微細均一に分散析出することを実験的に明らかにした.
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