研究概要 |
前年度までにおいて,Fe-Ni-Nb3元系におけるε-Fe_2Nb(Cl4)Laves相はオーステナイト(γ)相と広い組成範囲で平衡し,γ母相中に微細析出すること,またその形態は軸比が理想値(c/a=1.633)に近づく程微細になることを見出した.そこで本年度は,他のFe_2M Laves相(M:遷移金属元素)の中でもMとして固溶強化能に優れるMo及び立方晶系のLaves(C15)を形成するZrを用いて,γ/Laves相間の相平衡及び析出形態をしらべ,以下の結論を得た. 相平衝: Fe-Ni-Mo3元系の800℃以上において,γ-Feと平衡する相はFe_2Mo(λ)ではなくFe_7Mo_6(μ)相であり,μは微細均一に析出する.この系におけるγ/λ平衡は低温側において遷移包析型反応(α+μ→γ+λ)が生じる場合に限られる. Fe-Ni-Zr 3元系において,NiはFe_2Zr(C15)のFeサイトに20at%以上固溶し,広いγ/C15 2相領域を示す.しかし,γ相中へのZrの固溶量は0.1%以下と非常に小さい.なお,合金中の酸素量が多い場合には準安定なFe_<23>Zr_6相が現れる.また,Fe-20Ni-Nb-Zr4元系において,ZrはC14のε-Fe_2Nb中へはNbサイトの75%以上まで置換型に固溶するが,C15のFe_2Zr中へのNbの固溶量は数%以下と小さい. Laves相の析出制御: Fe-20Ni-Nb-Zr4元系において,ε相のc/a比はZrの固溶に伴い増加し,Nbサイトの約4割まで置換すると理想値1.633となる.また,このc/a比が理想値に近づくと,γ母相中に析出するε相の析出形態は等方的となり,且つ,微細になる. 以上の結果から,γ母相中に析出するε-Fe_2Nbの析出形態は,固溶元素がFe及びNbいずれのサイトに置換してもそのc/a比に強く依存することを実験的に明らかにし,置換サイトを考慮したε-Fe_2Nbを強化相とするオーステナイト系耐熱鋼の設計手法を提案した.また,Feサイトに置換するNiとCr,及びNbサイトに置換するZrを利用してε相の吻比が理想値となるFe-Ni-Cr-Nb-Zr 5元系合金を提案した.
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