研究概要 |
本研究は、材料が強加工によってナノ結晶化するメカニズムを調査し、それを実現するための加工条件を明らかにすることを目的とした。研究の結果、これまで報告されているボールミルおよび落錘加工以外に、ナノ結晶を生成できる新たな加工方法として、粒子衝撃加工法,ショットピーニング加工,摩擦加工,ドリル加工を開発した。これらの加工方法によりナノ結晶化が起こる共通の条件から、ナノ結晶化のための条件の1つとして真歪7以上の大歪を与えることが必要であることが明らかとなった。以上の強加工法により生成したナノ結晶の特徴は、種々の鉄鋼材料において、加工硬化領域と明瞭な境界を有すること,硬さが8〜14GPaと非常に高いこと,転位密度が加工硬化領域に比べて低いこと,加熱しても再結晶は起こらずに粒成長のみが起こることなどが挙げられる。また、セメンタイトを含む材料に強加工を加えると、セメンタイトが加工による変形に因らず分解することが分かった。このメカニズムについては、相変態やアモルファス化など、新しい理論の構築が必要である。 以上、科学研究費補助金によりナノ結晶化の過程か明らかとなり、また、ショットピーニング,ドリル加工といった既に産業界で普及している技術によって容易にナノ結晶材料を作製できることが明らかとなった。強加工による材料のナノ結晶化は、従来の改質方法と比較して、省資源,省エネルキー,省プロセスにおよびリサイクル性に優れていることから、今後さらに注目される技術と思われる。
|