昨年度に作製したファセット結晶成長フェーズフィールドモデル解析プログラムの計算効率を向上させるために、アダプティブゾーンアルゴリズムを適用したプログラムに大幅改良した。これを用いてシリコン過冷融液からのデンドライト成長を解析した。平衡結晶形状解析により改良プログラムの精度を検証し、異方性の誤差は1%以内、Gibbs-Thomson効果の誤差は10%以内であることを確認した後、過冷融液からのシリコンデンドライト成長を解析した。この際にも計算条件による成長速度の誤差を評価するために、界面領域幅λと界面張力長さd_0の比をパラメータにとした予備解析を行い、成長速度の計算誤差を約-10%とする場合の計算条件はλ/d_0=50であることを検証した。その条件下でシリコン過冷デンドライト成長の系統的解析を行い、成長結晶の先端形状、成長速度と過冷度の関係を求めた。その結果、過冷度あるいは成長速度の増加につれて成長結晶の形状は平衡形状からデンドライトに遷移すること、成長結晶の先端は過冷度によらず一定の形状を保ち成長すること、その特性長さは成長速度のほぼ-1/2乗に比例し、ノンファセットデンドライトと同様のスケーリング則を満たすことを明らかにした。 また、新たにW線加熱による実験装置を作成し、シリコン2次元結晶成長その場観察実験を行った。ここでは、2枚の単結晶サファイヤ板間にシリコンおよびSi-Ni合金試料を溶解、充填し、連続冷却時あるいは過冷成長時の2次元シリコン結晶成長界面形態をビデオカメラあるいは高速ビデオカメラにより観察した。その結果、試料充填条件などの最適化は必要であるものの、ほぼ所定の実験が可能であり、次年度には系統的な実験を行えることが確認した。
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