研究課題/領域番号 |
14205116
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 孝一 京都大学, 工学研究科, 教授 (40111942)
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研究分担者 |
河瀬 元明 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60231271)
中川 浩行 京都大学, 工学研究科, 講師 (40263115)
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キーワード | 廃水処理 / ニッケル担持炭素触媒 / 水熱ガス化 / エネルギー回収 / イオン交換樹脂 |
研究概要 |
本研究において開発に成功したニッケル担持炭素触媒(Ni/C触媒)は、水中の有機物を水熱条件下でガス化させるのに非常に有効な触媒であることを明らかにしてきた。本年度は、実際に工場から排出された実廃水について、開発した触媒を用いた水熱ガス化を実施し、実廃水の水熱ガス化特性やプロセスの実用化を目指した耐久試験、さらには提案プロセスのエネルギーバランスを計算し、提案プロセスの有効性を検討した。 実廃水は、電子工場から実際に排出されたものを用いた。水中の有機物の炭素濃度は2wt%であり、主にフェノール類、ケトン類、アルコール類が含まれていた。本廃水を固定層触媒反応器を用いて200〜350℃で処理した。200℃では、炭素転化率は0.2以下であったが、反応温度が上昇するに従って炭素転化率も高くなり、300℃ではLHSV=50h^<-1>という非常に高速処理でも0.9程度までになった。生成ガス組成は、反応温度が高くなると水素収率が増加する傾向が見られたが、350℃においてはメタン57.2%、水素15.4%、二酸化炭素27.4%のガスが得られた。この生成ガスの燃焼熱は23.2MJ/m^3であり、純メタンの64%にも相当し、燃料ガスとして十分利用できることがわかった。フェノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンで調製した模擬廃水で耐久試験を実施したところ、350℃で2000時間にわたり、液中の炭素をほぼ完全にガス化することができた。本試験では、LHSV=50h^<-1>という非常に高速処理条件であったので、さらに長時間使用できることが期待できる。廃水をイソプロピルアルコール3.33wt%の水溶液として、本提案プロセスのエネルギーバランスを計算したところ、反応器出口の高温処理水を効率よく熱回収することで、外部からエネルギーを加えることなく廃水中のイソプロピルアルコールのエネルギーの52%をメタンと水素として回収できることが明らかとなった。このように本水熱ガス化プロセスは、廃水処理だけでなく廃水からのエネルギー回収プロセスとして成り立つ効率のよいプロセスであることがわかった。
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