研究概要 |
耐塩性植物の分子育種に必要な、好塩性細菌の適合溶質であるエクトイン生合成遺伝子、K^+/Na^+恒常性制御に関与しているイネHKTの変異遺伝子、および酵母のナトリウムポンプ遺伝子、ENA1の植物における有効性を検証した。今年度はこれに加え、必要と思われるイネのK^+輸送体、HAKの特性について検討した。また、遺伝子組換え技術により作成される耐塩性イネを海水で水耕栽培する際、窒素源供給を可能にする海水から分離された窒素固定単細胞藍藻、Synechococcus sp.の培養特性の把握に着手した。 1)イネのK^+輸送体をコードするHAK遺伝子の単離と機能解析 イネ(Oryza sativa)から2種のOsHAK遺伝子を単離した。OsHAK1は地上部で、OsHAK2は地下部と地上部で発現しており、両遺伝子ともに培地中のK^+,Na^+濃度にかかわらず構成的に発現していた。大腸菌を宿主にした相補性試験から、OsHAK1,OsHAK2は共にK^+輸送能を有し、OsHAK2のK^+輸送能は25mM以上のNa^+による阻害された。さらに、OsHAK2にはNa^+輸送能も認められた。現在、ランダム変異導入実験によって、OsHAKの陽イオン輸送特性に重要な機能ドメインを調べている。 2)窒素固定単細胞藍藻、Cyanothece sp.TU 126の培養 東海大学熊沢教授より分与された、海産性窒素固定単細胞藍藻、Cyanothece sp.TU 126を炭素源、窒素源を含まない無機塩のみから成る人工合成培地で25℃で光照射下で培養した。培養13日まで初期の対数増殖を経て直線的に増殖し、細胞重量は約20倍に増えた。空中窒素の固定量を測定するために、硝酸態、アミノ態窒素、全窒素の定量法を確立した。藍藻をアルギン酸カルシウムゲルビーズに固定化し、同培地で光照射下で培養を開始したが、遊離細胞と固定化細胞の増殖特性を早急に比較する予定である。
|