研究概要 |
地球規模での温暖化や環境問題、高齢化社会の進展に伴い高感度・高速応答・小型軽量などセンシングデバイスのさらなる高性能化が望まれている。本研究代表者らは、表面プラズモン共鳴(SPR)あるいは導波モード(GWM)により薄膜に閉込められ電場増強されたエバネッセント波を励起光として用い有機色素の高感度蛍光スペクトル測定のセンシング応用をめざしている。本研究では、その特異な構造などから新しい光・電子デバイスへの応用が期待されているDNAおよびその疎水化誘導体(H-DNA)に蛍光色素を取り込んだ薄膜系のSPR励起蛍光による高性能センシングを検討した。適当な溶媒を用いてethydium bromide, rhodamine B, Acridine orangeなどの蛍光色素を取り込んだDNA, H-DNAを調製した。これらの溶液を用いて真空蒸着した銀膜上にスピンコーターにより数十mm厚のフィルムを作成した。蛍光分光光度計の中に2個の回転ステージを設置し、プリズムを通して金属膜側からチョップした波長可変He-Neレーザーをプローブ光(P偏光)として入射し、反射率の入射角依存性を観測した。それを励起光としある入射角での蛍光・励起スペクトル測定などを行った。DNA, H-DNAは均一溶液中に比べかなり高い濃度まで色素の相互作用を抑え、単分子分散状態でとりこむことができることがわかった。特定の入射角で反射率が極小になるSPRが観測され、この入射角で励起することによって、直接励起より2桁以上高感度に蛍光を観測できた。他のすべての組み合せにおいても同様に蛍光強度は増強された。これはSPR条件での金属自由電子のプラズマ振動との共鳴により電場増強されたエバネッセント波が薄膜中の蛍光分子を効率的に励起したためである。そのような系の蛍光強度はある流速以上の窒素ガスおよび窒素酸化物ガスおよび排気に伴って、可逆的かつ高速応答で減少および回復した。DNA超薄膜のSPR励起蛍光による高性能ガスセンサの可能性が示された。
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