新しい液相有機合成に不可欠な戦略的分離・精製法を開発し、反応と分離の融合化をめざして、本研究を遂行した。とくに、酸・塩基抽出法を可能にし、かつ取り外し容易な官能基をフェイズタグとして用いるという新しい方法論の開発に焦点をあて、その開発を試みた。 まず、酸・塩基抽出法のための多機能フェイズタグの開発を試み、ピリジルシリル基が有効に働くことを見出した。ピリジルシリル基は、ピリジル基を利用して酸・塩基抽出できるだけでなく、炭素-ケイ素結合が安定であるため、幅広い条件で分子変換が可能であるのが特長である。しかも、ケイ素の性質を利用して容易に導入や取り外しができることも大きな利点である。 フェイズタグの導入法として、ヒドロシリル化やピリジルシリルメチルリチウムを用いる方法を開発するとともに、ビニルシランやアルキニルシランに対するカルボメタル化などの方法も開発した。また、フィエズタグの除去法として玉尾-Fleming酸化や檜山クロスカップリング反応が利用できることも明らかにした。 また、第一世代フェイズタグともいうべきピリジルシリル基以外のいくつかのフェイズタグの開発を試みた。さらに、これらのタグを利用して、tamoxifen型4置換オレフィンなどの薬理活性物質多様性指向型合成を行った。また、タグを用いることにより、蛍光を有する拡張されたπ電子系ライブラリーの選択的な合成を行った。この合成法は、オレフィン上の置換基の源は全て入手容易なハロゲン化アリールであることが特長である。また、Mizoroki-Heck反応やクロスカップリング反応のいずれかでジハロゲン化物やトリハロゲン化物を用いると、興味深い骨格を持つ拡張π電子系が自在に合成できることも明らかにした。本合成法においては、構造異性体が作り分けられるのみならず、スターバースト型π電子系や構造的に新規なポリマーを合成することも可能である。
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