研究概要 |
光学活性アリルシラン化合物の固相合成を行い、光学活性ホモアリルアルコール類及び、環状不飽和エーテル類の不斉合成への利用について研究を行った。最近本研究グループによってその合成法を確立された固相担持クロロジシランに対し、(R)-4-フェニル-3-ブテン-2-オールや(R)-3-デセン-2-オール等の光学活性アリルアルコールを塩基存在下反応させて、固相担持ジシラニルエーテルを得た。この化合物に対し、イソニトリル-パラジウム触媒存在下で分子内ビスシリル化を行って得られた混合物をブチルリチウムで処理することで、固相担持アリルシランが得られた。この固相担持アリルシランのエナンチオマー過剰率は、アルデヒドとの反応で得られたホモアリルアルコール誘導体の光学純度を定量することにより行った。いずれの光学活性アリルアルコールから得られたアリルシランも、-78℃における脂肪族アルデヒドとの反応において、極めて高い光学純度を有するホモアリルアルコール生成物を与えた。このことから、光学活性アリルシランの生成過程において、出発アリルアルコールの光学純度がほぼ保たれることが明らかとなった。この方法を用いて、(R)-6-テトラヒドロピラニルオキシ-3-ヘキセン-2-オールの誘導化を行ったビスシリル化-ブチルリチウム処理を経て得られる光学活性アリルシランを酸処理することにより、末端に水酸基を有する光学活性アリルシランを得た。この化合物に対しトリメチルシリルトリフラート存在下でアルデヒドを反応させると、3,4-二置換-5-オキサシクロヘプテン誘導体が60〜70%の収率で得られた。いずれの生成物も出発アリルアルコールの光学純度を98%以上保っており、末端に水酸基を有するアリルシランが効率的に固相合成されていることのみならず、環化反応にも応用できることが示された。
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