研究概要 |
固相担持型官能性光学活性アリルシラン反応剤の合成をめざし、プロキラル不飽和有機化合物へのシリルボランの不斉付加反応、すなわち不斉シリルホウ素化の可能性について検討を行った。中でも、合成化学的に有用なβ-ボリルアリルシランを与えるプロキラル不飽和有機化合物として末端アレンを選び、シリルボランの不斉付加反応について検討した。まず、ホウ素上に様々な光学活性置換基を有するシリルボランを合成し、5-フェニル-1,2-ペンタジエンとの反応を行った。トリフェニルホスフィンを配位子とするパラジウム触媒の存在下で反応を行ったところ、いずれのシリルボランを用いた反応においても末端アレンの二つの二重結合のうち内部二重結合でのみ付加反応が進行し、ホウ素上の光学活性置換基がピナンジオキシ基の時に62%d.e.の最も高い立体選択性が認められた。そこで、トリフェニルホスフィンに代えて様々な光学活性単座配位子を用いて、ピナンジオキシ基を有するシリルボランと5-フェニル-1,2-ペンタジエンとの反応を行った。その結果、2-ジフェニルホスフィノ-1,1'-ビナフチルを用いた反応で、89%d.e.の最も高い立体選択性が得られた。以上の検討から明らかとなった最適条件を用いて、種々の末端アレンに対する不斉シリルホウ素化反応の立体選択性について検討した。アレン上の置換基をメチル基から2-フェニルエチル基、シクロヘキシル基と嵩高くするに従い、立体選択性は86%から96%d.e.にまで向上した。また、芳香族置換基を有するアレンに対する付加反応も概ね92%程度の立体選択性で進行したことから、今回見いだしたアレンの不斉面選択的シリルホウ素化反応は、多くの末端アレンに適用可能な汎用性の高いものであることがわかった。
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