超高密度グラフト化表面の科学と機能

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14205131
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 福田 猛 京都大学, 化学研究所, 教授 (00111972)
• 研究分担者: 後藤 淳 京都大学, 化学研究所, 助手 (20335219) ; 大野 工司 京都大学, 化学研究所, 助手 (00335217) ; 辻井 敬亘 京都大学, 化学研究所, 助教授 (00217308) ; 岸田 晶夫 国立循環器病センター研究所, 生体工学部部長 (60224929)
• キーワード: 高密度高分子ブラシ / リビングラジカル重合 / グラフト重合 / グラフト膜の相溶性 / 中性子反射率測定 / 異種ポリマーグラフト化表面 / グラフト化微粒子の秩序構造 / 高分子電解質グラフト膜

研究概要

リビングラジカル重合法(LRP)の利用により長さの揃った高分子鎖を飛躍的な高密度で固体表面にグラフト重合することができる。この超高密度グラフト膜中の分子鎖は、良溶媒中で伸びきり鎖に匹敵するほど高度に伸張しており、この事実は、化学的にも力学的にも安定な新しいタイプのナノ構造機能性超薄膜の創製コンセプトを与える。
前年度までの研究で、超高密度グラフト膜が等価なスピンキャスト膜に比べて著しく高い圧縮弾性率やガラス転移温度をもつことを示した。これらの事実は、乾燥状態においてもグラフト鎖が高度に配向していることを反映する。今年度は、さらに多くの実験により超高密度グラフト膜の構造・物性を配向効果の観点から研究し、これを新規な構造機能素子として利用するための基礎データを集積した。主な結果は以下の通りである。
(1)グラフト膜とフリーな高分子の相溶性に関する研究:PMMAグラフト膜とフリーなPMMAの溶融状態における相溶性を中性子反射率測定法で調べた。グラフト密度の低い膜がフリーポリマーと相溶するのに対し、高密度膜はフリーPMMAと全く相溶しないことが判明した。
(2)2種のポリマーをグラフト重合した固体表面が、溶剤処理の方法に依存する多彩かつ特徴的な表面ナノ構造を示すことが判明した。
(3)超高密度グラフト膜を付与したナノ微粒子が、グラフト鎖間の立体反撥により整序配列することを示した。
(4)高分子電解質の高密度膜が媒体のpH変化に対し特異な膨潤挙動を示すことが判明した。

研究成果

• [文献書誌] T.Fukuda: "Mechanisms and Kinetics of Living Radical Polymerization : Absolute Comparison of Theory and Experiment"ACS Symp.Ser.. 854. 24-40 (2003)
• [文献書誌] K.Koh: "Precision Synthesis of Organic/Inorganic Hybrid Nanocapsules with a Silanol-Functionalized Micelle Template"Angew.Chem.Int.Ed.. 42. 4194-5197 (2003)
• [文献書誌] K.Ohno: "Fabrication of Ordered Arrays of Gold Nanoparticles Coated with High-Density Polymer Brushes"Angew.Chem., Intern.Ed.. 42. 2751-2754 (2003)
• [文献書誌] A.Goto: "Mechanism-Based Invention of High-Speed Living Radical PolymerizationUsing Organotellurium Compounds and Azo-Initiators"J.Am.Chem.Soc.. 125. 8720-8721 (2003)
• [文献書誌] Y.Kwak: "A Difference of Six Orders of Magnitude : A Reply to "The Magnitude of Fragmentation Rate Coefficient"J.Polym.Sci.Polym.Chem.. 41. 2833-2839 (2003)
• [文献書誌] 福田 猛: "リビングラジカル重合と新規ブロックコポリマー"日本ゴム協会誌. 76. 289-293 (2003)
• [文献書誌] 吉川千晶: "リビングラジカル重合の反応速度論:理論と実験の絶対比較"化繊講演集. 60. 49-56 (2003)
• [文献書誌] K.Ohno: "Some Aspects of Nitroxide-Mediated Living Radical Polymerization of N-(p-Vinylbenzyl)phthalimide"Eur.Polym.J.. 40. 81-88 (2004)
• [文献書誌] A.Goto: "Kinetics of Living Radical Polymerization"Prog.Polym.Sci.. 29. 329-385 (2004)
• [文献書誌] Y.Kwak: "Rate Retardation in Reversible Addition -Fragmentation Chain Transfer (RAFT) Polymerization : Further Evidence for Cross-Termination Producing 3-Arm Star"Macromolecules. 37. 1219-1225 (2004)
• [文献書誌] E.Marutani: "Surface-Initiated Atom Transfer Radical Polymerization of Methyl Mthacrylate on Magnetic Nanoparticles"Polymer. 45. 2231-2235 (2004)
• [文献書誌] Y.Tsujii: "High-Density Polymer Brushes"ACS Symp.Ser.. (in press). (2004)