研究概要 |
これまでの研究はゲルの静止摩擦や緩和現象を避けて、動的な平衡過程を中心に展開してきた。そこで今年度は,ゲル表面どうしの摩擦界面が示す静止摩擦の挙動に焦点を置いて検討してきた。これは,ゲル表面の摩擦特性を理解する上での重要なカギとなる界面相互作用の働き方-摩擦界面がどのような状況・状態にあるか-は,平衡状態に達した動摩擦よりもむしろ、「静→動」の過程で発生する静止摩擦にこそ,より色濃く影響してくると考えられたからである。 筆者らが提唱した理論モデルによると、反発相互作用系におけるゲルの摩擦は流体潤滑が働くので、静止摩擦がないと予測できるが、今回の実験では、吸着相互作用がする系のみではなく、静電反発系においても静止摩擦が観測され、界面すべり運動には臨界せん断応力が存在していることを見出した。これは、連続体流体力学では説明できない現象であり、ゲル中にと閉じ込まれている水が小さいせん断応力に対して、固体的な振る舞いをしていることを示唆している。さまざまな滑り速度、荷重、温度におけるゲルの静止摩擦を調べた結果、静止摩擦力は速度にほぼ依存しないこと、垂直圧力の増加に伴って増加すること、温度の上昇によって小さくなることが明らかとなった。また、電解質ゲルの静止摩擦力は高分子網目の対イオンの水和能力によって変化することも明らかになった。 また、大過重下の摩擦挙動を研究するために、独自の摩擦測定装置を設計・試作した。これまで手付かずの人体並の高荷重(数十MPa)領域でのゲル摩擦の経時的応答(瞬間的に荷重が抑えた時の応答など)や時間に対する履歴などの研究を展開することが可能となった。
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