1)高分子電解質ゲルに中性な高分子網目を導入し、その2重網目構造を持つゲル(DNゲル)は含水率が90%以上にもかかわらず、初期弾性率0.3MPa、圧縮破壊応力20MPaを示す。DNゲルの高強度化メカニズムを研究するために、ゲルの破壊エネルギーGを測定する方法を確立し、様々な重合条件で合成したDNゲルのGを測定した。その結果、重合条件が最適化されたDNゲルは1000J/m^2のGを示すことが分かった。この値は高強度ゴムに匹敵するもので、従来の高分子材料の破壊理論では高分子密度がゴムの十分の一しかないゲルのこの強度を説明できない。ゲルの高度な透明性を利用して、光散乱でゲルの静的・動的構造を調べた結果、第一回目の高分子電解質ゲルの構造不均一性とDNゲルの力学物性(圧縮強度、破断強度)には明確な相関が見られた。つまり、ゲルの構造不均一性が高強度を生み出していることである。このような高強度メカニズムは柔らかい含水体固有なものであり、関節軟骨や腱に代表される生体ゲルの強さの秘密を知る手掛となる。 2)ゲル中の溶媒の粘性を変化させることで、6桁をわたる広い速度領域でのゲルの摩擦挙動を始めて測定することに成功し、ゲルの摩擦則には、速度-粘度変換則が成り立つことを明らかにした。さらに、高強度DNゲルを使い、関節が受ける荷重並の荷重下でのゲルの摩擦挙動を調べた。その結果、100kg/m^2の大荷重下においてもゲル摩擦の反発・吸着理論が成立し、DNゲルの摩擦はSommerfiled数10^<-9>mのところで高分子の吸着による弾性摩擦から流体潤滑摩擦へ転移することが明らかとなった。この知見から、高荷重下における関節軟骨の摩擦機構との類似性が伺え、高強度・低摩擦ゲルを用いた人工関節の設計指針となる。
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