研究概要 |
種々の6-置換基-1,3,5-triazine-2,4-dithiol mono sodium(R_1、R_2は置換基)を合成し、有機メッキ法による薄膜生成条件と薄膜の構造を検討した。濃度と電流密度の関係の検討から、拡散律則の条件では非晶薄膜が、また電荷移動律則の条件では結晶薄膜が得られることが明らかとなった。さらに、非晶及び結晶構造はトリアジンジチオールの置換基構造の影響を受け、置換基が短鎖長のときには非晶が、また長鎖長の時には結晶構造となることも分かった。また、置換基が一本鎖の時には非晶構造が、二本鎖の時には結晶構造が生成しやすいことも明らかとなった。それぞれの電流効率を測定し、電解重合時間の調整により一定の層数の皮膜が得られることが分かった。不飽和基を有するトリアジンジチオールは電解重合すると、生成する皮膜はすべて三次元化した溶剤不溶の薄膜に変化する。さらに、皮膜の成長速度rは直線則に沿って増加するので、電荷移動過程が律則反応である。6-ジオクチルアミノ-1,3,5-トリアジン(DOTT)のように飽和置換基のトリアジンジチオールでは同じような電解重合挙動を示すが三次元化しないため皮膜は溶剤に可溶となる。この時の薄膜はLB膜のY型膜に類似しているが、不飽和基含有トリアジンジチオールから得られる三次元化薄膜はLB膜のX型膜である。このX型膜は三次元化されているため、熱などにより再配列することは殆んどなく、非線形光学材料やコンデンサー材料として有効であると考えられる。 6-置換基-1,3,5-triazine-2,4-dithiol mono sodiumの結晶構造を検討した結果、トリアジン環の内部が電子ドナー部分とアクセプター部分(両極性物質:アンビポーラー)に分離されるため、薄膜はドープされないときでも電圧により導電性を示した。従って、皮膜の成長は電位を一定電に保持することにより成長することが分かった。さらに、この性質を利用することにより、有機半導体、コンデンサーおよび抵抗体など電子素子としての可能性が今後期待される。
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