研究概要 |
設計段階での構造寿命を迎える高速輸送システム経年構造の安全性を保証するための革新的技術開発の気運が高まってきている.長期にわたって多数のフライトを行ってきた経年航空機や大気圏の離脱と突入を繰り返す再使用型宇宙往還機においては,多数の微小な疲労損傷が存在することになり,その構造安全性を著しく低下させる要因となっている.本研究では,微小な疲労損傷が生じた高速輸送システム経年構造を軽量でかつ高強度の繊維強化複合材パッチで補修し,その補修構造にセンシング機能およびアクチュエーション機能を付与することによって,新規構造と同等の構造安全性を与えるスマート補修構造工学を確立する.そのために本年度は,損傷の拡大進展の予測手法,損傷の実時間同定手法および損傷の拡大進展の抑制手法の研究を実施した. 1.損傷の拡大進展の予測手法 疲労き裂を有する高速輸送システム経年構造アルミパネルを片面からGFRP複合材パッチで接着補修したモデルを対象として,特異要素を導入した高精度ハイブリッドBEM-FEMを開発し,パネル中の疲労き裂進展および接着層中のはく離進展の信頼性の高い予測手法を開発した. 2.損傷の実時間同定手法 ひずみ計測レイヤーの設置位置およびひずみ計測点数の同定精度に及ぼす影響を検討し,最適位置および最適計測点数を明らかにした.さらに,複合材パッチのひずみ計測情報に計測誤差が含まれている場合について疲労き裂の高精度の実時間同定法を開発した. 3.損傷の拡大進展の抑制手法 疲労き裂およびはく離の進展に対する抑制効果を評価し,アクチュエーションレイヤーの最適位置および最適レイヤー数を明らかにした.
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