研究概要 |
誘電体内の内部帯電シミュレーションに関しては,PIC-MC法(Particle-In-Cell, Monte-Carlo)を用いたプログラムを作成して,既存のワークステーションで計算を実行した.対象試料としてはテフロンを選定し,入射電子エネルギーが数十keVの場合を計算した.その結果,誘電体内部に蓄積する電荷の様子は観察できたが,実験等との比較によると,電子の到達距離やその分布に相違が見られ,今後の改良が必要であることが分かった.この結果は国際会議で発表した.計算プログラムの開発及び実行を効率化させるため,並列コンピュータを本年度に導入し,計算能力を向上させた.現在,プログラムの並列化の作業を行っている. 内部帯電データベース作成の基礎実験として,宇宙機表面材に用いられている誘電体試料に対して電子線照射試験を原子力研究所(高崎)および本学既存の施設で行った.計測は,これまでに開発したPIPWP法およびPEA法を用いた.電子線の入射エネルギーは,静止軌道上で人工衛星が経験する数MeV程度とした.実験の結果,誘電体内に蓄積する電荷の様子,およびその減衰の様子を捉えることが出来た. 照射実験に必要な設備を本学内に設置するために,装置の設計・製作を行った.実験には超高真空のチャンバ及び電子線照射装置が必要であるが,チャンバ部を製作し,宇宙空間を模擬できるほどの真空状態を得られることが確認できた.現在は装置の性能確認テスト及び予備実験を行っている.
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