研究概要 |
防撓パネルの崩壊挙動および強度について基本的な特性を明らかにするために,本年度は以下の研究を実施した。 (1)組立てT型防撓材および型鋼T型防撓材の2種類について,残留応力の計測を実施した。その結果,ウェブとフランジの接合部近傍に,前者では圧縮の残留応力が,また,後者では引張の残留応力が発生していることが明らかになった。ただし,これらの残留応力が防撓パネルの座屈崩壊挙動と強度に及ぼす影響は小さいことが,有限要素法に基づく弾塑性大たわみ解析の結果により確認された。 (2)ビルジ部曲面防撓パネルについては,有限要素法および解析的手法による弾性/弾塑性解析を実施し,実船構造の寸法では基本的に塑性座屈が発生することを確認した。 (3)昨年度作成した防撓パネル用の解析解プログラムおよび有限要素法解析プログラムを使用して,基本的な弾性状態での防撓材のトリピング現象を解明するために,一連の解析を実施した。その結果,パネルが局部座屈し,場合によっては2次座屈した後に防撓材にトリピングが発生し,さらに全体座屈が発生する崩壊モードがあることが確認された。 (4)板の圧壊挙動を再現する矩形板理想化構造要素を,通常のアイソパラメトリック梁・柱要素と組み合わせて,防撓パネルの圧壊挙動の再現を試みた。そして,防撓パネルの座屈崩壊に関する基本的な挙動は再現できることを確認した。 (5)船体の防撓構造では不可避な,水圧荷重が座屈崩壊挙動に及ぼす影響を,矩形板理想化構造要素に取り入れた。具体的には,要素内のたわみ波形として,座屈モードに相当する周辺単純支持モードの波形の他に,水圧荷重のもとで成長する周辺固定モードの波形を新たに導入した。本年度は,矩形板要素にのみ水圧の影響を取り入れたが,これにより水圧と面内圧縮荷重を受ける連続パネルの座屈崩壊挙動が,比較的よい精度で再現できることが確認された。 (6)アルミ製の防撓パネルを対象として,材料の加工硬化が防撓材間のパネルの局部座屈崩壊挙動と最終強度,および防撓パネルとしての全体座屈崩壊挙動と最終強度に及ぼす影響を再現できる力学モデルを構築し,その妥当性を有限要素法解析の結果との比較を通して確認した。
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