研究概要 |
現在、いもち病菌の種特異的寄生性の遺伝的機構を2つのサブプロジェクト、すなわち(1)非病原力遺伝子の同定と異同検定(2)同定した非病原力遺伝子のクローニングに分けて進めている。本年度の成果はつぎのとおりである。 (1)非病原力遺伝子の同定と異同検定 すでにその存在を明らかにしていたイネ菌のコムギに対する3つの非病原力遺伝子が、すでに同定した遺伝子と同じものかどうかをアレリズムテストにより検討した。その結果、ひとつはPWT1,2つ目はPWT2,3つ目は未同定の新規遺伝子であることが明らかとなった。このことより、すでに同定していたアワ菌のコムギに対する非病原力遺伝子PWT1,PWT2は、アワ菌・イネ菌共通に存在する遺伝子であることが明らかとなった。つぎに、両遺伝子がどの程度の範囲の植物に作用するかを検討した。コムギ菌とエンバク菌のF_1のなかからコムギ、エンバク両植物に病原性を持つ菌株を選抜し、これにアワ菌を交雑した。その雑種後代をコムギ、エンバク等に接種した結果、両遺伝子はコムギのみならずエンバク、イタリアンライグラスにも作用するが、ウィーピングラブグラスには作用しないことが明らかとなった。このことから、両遺伝子はイチゴツナギ亜科植物に作用する遺伝子であることが示唆された。 (2)非病原力遺伝子のクローニング 昨年度コムギ菌のBACライブラリーを構築した。本年度はさらにアワ菌、エンバク菌のBACライブラリーを作成した。これにより、効率よくウォーキングを行うための基盤が整備できた。現在、アワ菌・コムギ菌ライブラリーを用いてPWT1へのウォーキングを行っている。PWT4については、AFLP連鎖マーカーにより近傍領域の連鎖地図を作成し、さらにそのAFLPマーカーをクローニングした。これらのマーカーから、エンバク菌ライブラリーを用いてウォーキングを始める段階にある。
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