昆虫-バキュロウィルス相関におけるアポトーシスの分子機構解析

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14206007
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 小林 迪弘 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (60111837)
• 研究分担者: 河村 敏 岐阜県生物技術研究所, 専門研究員 ; 新美 輝幸 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (00293712) ; 池田 素子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (20262892)
• キーワード: バキュロウイルス / 核多角体病ウイルス / 培養細胞 / アポトーシス / 昆虫

研究概要

マイマイガLymantria disparの核多角体病ウイルス(LdMNPV)のLd-hrf1遺伝子は、Autographa californica MNPV (AcMNPV)のLd652Y細胞における増殖に必須であることが報告されている。
本研究では、Ld-hrf1が、Ld652Y細胞におけるNPVの増殖をレスキューするか否かを、Ld652Y細胞において不全感染となる5種のNPVを用いて検討した。AcMNPV、カイコNPV(BmNPV)、アメリカシロヒトリNPV(HycuNPV)、シロイチモンジヨトウNPV(SeMNPV)およびハスモンヨトウNPV(SpltNPV)のゲノムDNAと、Ld-hrf1の発現ベクターをそれぞれLd652Y細胞にコトランスフェクションし、ウイルスの増殖性を調べた。その結果、Ld652Y細胞において感染がウイルスDNAの複製まで進行するAcMNPV、BmNPVおよびHycuNPVは、いずれもウイルス構造たんぱく質とポリヘドリンを発現し、出芽ウイルスを産生した。一方、Ld652Y細胞において感染がウイルスDNAの複製まで進行しないSeMNpvとSpltMNpvでは、出芽ウイルスの産生もウイルス構造たんぱく質とポリヘドリンの発現も認められなかった。以上の結果から、Ld-hrf1は、Ld652Y細胞においてウイルスDNA複製以降に不全感染となるNPVの増殖を、普遍的にレスキューする可能性があることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Iwahori, S., Ikeda, M, Kobayashi M: "Comparative Characterization of pcnagenes from Hyphantria cunee nucleopolyhedrovirces, and two cell lines from the fall armyworm"J. Insect Biotechnol. Sericol.. 71・1. 25-34 (2002)
• [文献書誌] Iwahori, S., Ikeda, M, Kobayashi M: "Generation and characterization of Autographa californica nucleopolyhedrovirus mutants defective in pcnagene"J. Insect Biotechnol. Sericol.. 71・3. 129-140 (2002)
• [文献書誌] Felipe Alves, C.A., Ikeda, M., Kobayashi, M: "Characterization of Hyphantria cunea NPV gp64 gene and analysis of elements regulating its early promoter activity"J. Insect Biotechnol. Sericol.. 71・3. 141-150 (2002)
• [文献書誌] Felipe Alves, C.A., Ikeda, M., Kobayashi, M: "Identification and characterization of Hyphantria cunea nucleopolyhedrovirus homologues repeated regions"Virus Genes. 25・3. 281-290 (2002)
• [文献書誌] Kamiya, K. 他5名: "Genotypic variation of a wild isolate of Hyphantria cunee nucleopolyhedrovirus"J. Insect Biotechnol. Sericol.. 72・1. 57-64 (2003)
• [文献書誌] Ishikawa, H. 他6名: "Induction of apoptosis in an insect cell line, IPLB-Ld652Y, intected with nucleopolyhedroviruses"J. Gen. Virol.. 84・3. 705-714 (2003)